Japanische Klassiker mit Furigana
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きんぎょりょうらん
金魚撩乱
岡本 かの子
Lesen Sie 金魚撩乱 (きんぎょりょうらん) von 岡本 かの子 (おかもとかのこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 33.999 Zeichen · 67 Bildschirme
彼は唇を噛んでそれを顎の辺で喰い止めた。
「おれは平気だ」と云った。
その歳は金魚の交媒には多少季遅れであり、まだ、プールの灰汁もよく脱けていないので、産卵は思いとどまり、復一は親魚の詮索にかかった。彼は東京中の飼育商や、素人飼育家を隈なく尋ねた。覗った魚は相手が手離さなかった。すると彼は毒口を吐いてその金魚を罵倒するのであった。
「復一ぐらい嫌な奴はない。あいつはタガメだ」
こういう評判が金魚家仲間に立った。タガメは金魚に取付くのに凶暴性を持つ害虫である。そんなことを云われながらも彼はどうやらこうやら、その姉妹魚の方をでも手に入れて来るのであった。彼の信じて立てた方針では、完成文化魚のキャリコとか秋錦とかにもう一つ異種の交媒の拍車をかけて理想魚を作るつもりだった。
翌年の花どきが来て、雄魚たちの胸鰭を中心に交尾期を現す追星が春の宵空のように潤った目を開いた。すると魚たちの「性」は、己に堪えないような素振りを魚たちにさせる。艦隊のように魚以上の堂々とした隊列で遊弋し、また闘鶏のように互いに瞬間を鋭く啄き合う。身体に燃えるぬめりを水で扱き取ろうとして異様に翻り、翻り、翻る。