Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うし

鎧櫃の血

岡本 綺堂

Lesen Sie 鎧櫃の血 (うし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.702 Zeichen · 99 Bildschirme

Aozora Bunko

それでもまだ腑に落ちないことがあるので、彼は気を取直して訊いた。

「そこで、鼠はどうしたのだ。おまえが持って来たのか。」

「それが不思議でございます。」と、お元はうるんだ眼をかがやかしながら答えた。「岐阜の宿をぬけ出す時に、商売道具は勿論、鼠もみんな置き去りにして来たのでございますが、途中まで出て気がつきますと、一匹の小鼠がわたくしの袂にはいっていたのでございます。どうして紛れ込んでいたのか、それともわたくしを慕って来たのか、なにしろ捨てるのも可哀そうだと思いまして、懐に忍ばせたり、袂に入れたりして、木曾路までは一緒に連れて来ましたが、伊平さんの家に落ちつくようになりました時に、因果をふくめて放してやりました。鼠はそれぎり姿を見せませんので、どこかの縁の下へでも巣を食ってしまったものと思っていますと、旦那さまと御一緒に江戸へ帰る途中、碓氷峠をくだって坂本の宿に泊りますと、その晩、どこから付いて来たのか、その鼠がわたくしの袂のなかにはいっているのを見つけて、実にびっくり致しました。それほど自分に馴染んでいて、こうしてここまで付いて来たかと思うと、どうも捨てる気にならないので、そっと袂に入れて来ました。