Japanische Klassiker mit Furigana
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うし
鎧櫃の血
岡本 綺堂
Lesen Sie 鎧櫃の血 (うし) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 48.702 Zeichen · 99 Bildschirme
しかも、これで隠れおおせるかどうかは頗る疑問であるので、素破といわば飛び出して手あたり次第に斬り散らして逃げる覚悟で、彼はしっかりと大小を握りしめていた。娘はあわてて戸をしめて去った。
鶏の声が又きこえた。表に人の声もきこえた。
「物置はここだな。」
捜索隊が近づいたらしく、四、五人の足音がひびいた。家内を詮議して、更にこの物置小屋をあらために来たのであろう。治三郎は片唾をのんで、窺っていた。
「さあ、戸をあけろ。」という声が又きこえた。
家内の娘が戸をあけると、二、三人が内をのぞいた。俵のかげから一羽の雌鶏がひらりと飛び出した。
「むむ、鶏か。」と、かれらは笑った。そうしてそのまま立去ってしまった。
治三郎はほっとした。頼朝の伏木隠れというのも恐らくこうであったろう。彼等は鶏の飛び出したのに油断して、碌々に小屋の奥を詮議せずに立去ったらしい。鶏はどうしてここにいたか。娘が最初に戸をあけた時に、その袂の下をくぐって飛び込んだのかも知れない。
娘が治三郎にむかって早く隠れろと教えたのは、彼に厚意を持ったというよりも、ここで彼を召捕らせては自分たちが巻き添いの禍を蒙るのを恐れた為であろう。