Japanische Klassiker mit Furigana
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ながさきのかね
長崎の鐘
永井 隆
Lesen Sie 長崎の鐘 (ながさきのかね) von 永井 隆 (ながいたかし) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 65.109 Zeichen · 131 Bildschirme
まったく何をする気にもならぬ。茶碗も皿も、そのままいろりの端に並んでいる。
患者から迎えが来た。国敗れて何の患者ぞや。今日は一億が泣いているのだ。一人や二人の患者の生死が問題になるものか、そんな患者を助けたところで、今さら日本が立ち上がるものじゃなし。断れ、断れとばかりすげなく断ってしまう。今日は皆むかむかして、何かあれば喧嘩を吹きかけたくなっている。
使いの者は、ああそうですかと力なくいい、すごすごと帰っていった。私は寝ころんだまま、そのさむざむとした後ろ姿が茗荷畑の中を遠ざかって行くのをじっと見送っていた。
私はむっくり起きなおり、豆ちゃんに今の使いの人を呼び返してくるように頼んだ。心機は一転した。一人の尊い生命をこそ助けねばならぬ。国は敗れた。しかし傷者は生きている。戦争はすんだ。しかし、医療救護隊の仕事は残っている。日本は滅んだ。しかし医学は存在している。私たちの仕事はこれからではないか。国家の興亡とは関係のない個人の生死こそ、私たちの本務である。敵味方の区別は、本来赤十字にはないのである。日本が個人の生命をあまりに簡単に粗末に取り扱ったから、こんなみじめな目にあったのではないか。