Japanische Klassiker mit Furigana
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すずめがもりのかいい
雀が森の怪異
田中 貢太郎
Lesen Sie 雀が森の怪異 (すずめがもりのかいい) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 6.614 Zeichen · 14 Bildschirme
(下の主人か、お媽さんかがあがって来たな)
と、彼は思った。友人なれば入口の障子をがたぴしあけて――君はいますかと大きな声を立ててからあがって来るはずであった。下の主人夫婦にしてもすこし荒い跫音であった。彼はふときき耳をたてた。微な跫音はもう梯子段をあがり切ったのかちょっと聞えなくなった。
(何人だろう)
彼がそう思ったとたんに廊下の障子がすうと開いて、白い衣服を着た者が入って来た。気温が高いと云っても、六月の末ではまだ浴衣を着るには早過ぎるのであった。
(今から浴衣を着るのは、ちと早過ぎるな)
彼はそう思いながらこの白い衣服を着た者に好奇の眼を向けた。それは二十前後の小さな小さな白い顔をした弱よわしそうに見える青年であった。それは岐阜の故郷にいるはずの友人であった。
「神中君じゃないか」
彼は岐阜の県庁に雇員となって勤めているはずの友人が、浴衣がけのような恰好で、つい隣へ遊びに来たとでも云うような風でたずねて来たことが物の調和を欠いているので眼をった。彼は対手の返事を待たないで、
「何時来たのだ」
「今日、ね」
神中の声は昔ながら穏かなおっとりした声であった。