Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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うんもへん

雲母片

宮本 百合子

Lesen Sie 雲母片 (うんもへん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 2.525 Zeichen · 6 Bildschirme

Aozora Bunko

そして、力を入れ、先刻の言葉がまた聞えるように思う程、はっきりはっきり定りどころをきめて、もう一度、いの字を書いた。そして、たった一言いった。「さあ。」

私は、すっかり上気せあがり、胸がどきどきしてよく眼が見えないようになった。母の心持が押しかぶさるようにこわく、苦しく、重く迫って来た。母が心の中で怒り、何故書けないのか、馬鹿さん、と思っているのはよくわかる。上手に書きたく、褒められたいのだけれども、筆というものは、何という手に負えないものか。その上、私の心には字というものの感じがはっきり写らず、母の書いてくれるいの字も、いという音には相違ないのだけれど、眼で見れば、少し真中で曲った蟹の鋏形の二本の棒としか見えない。それが、どうして、私共の喋る言葉のいなのか。大切な、間違えてはいけない字だと、凝っと見れば見る程不可解な、まごつく、奇怪な二本の棒になって来る。而も、私がこんなものさえ上手に書けなくては、学校へなど到底行けないとおっしゃったではないか。ああ、あんなにいい袴や草履が出来たのに!

私は、涙を出し、がむしゃらになって、この変ないを組伏せそうに、ぐっ、ぐっと筆をこじった。