Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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あおいひも

青い紐

田中 貢太郎

Lesen Sie 青い紐 (あおいひも) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 5.592 Zeichen · 11 Bildschirme

Aozora Bunko

夜店の後の街路には蜜柑の皮やバナナの皮が散らばっていた。哲郎はそこを歩きながら今の女はどこへ往ったろうと思ってむこうの方を見た。むこうには微暗い闇があるばかりで人影は見えなかった。彼は女はどこかこのあたりの者だろうと思った。

哲郎は戸の閉った蕎麦屋の前へ来ていた。微に優しい声で笑うのが聞えた。彼はその方へ顔をやった。壮い女が電柱に身を隠すようにして笑っていた。それは長い襟巻で口元を覆うようにしたあの女であった。

「あ」

哲郎はもう何も考える必要はなかった。彼は女の傍へ往った。

「僕は電車に乗って帰るのが惜いような気がするから、こうしてぶらぶら歩いてるのです、どうです、いっしょに散歩しませんか、すこし遅いことは遅いが」

女は電柱を離れて寄って来た。黒い眼と地蔵眉になった眉がきれいであった。

「あなたは、どちらです、遠いのですか」

「近いのですよ」

「どうです、散歩しませんか、どっか暖い物をたべる家でも好いのですが」

「そうね、でも、もう遅いから、私の家へまいりましょう」

「往っても好い、かまわないのですか」

「私、一人ですから好いのですよ」

「下宿でもしているのですか」