Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 11.832 Zeichen · 24 Bildschirme
短気で一徹で、汗っかきで我儘。その上、無類の強情で負けずぎらい。痛いとか、参ったとかということは口が腐っても言わぬ。因業親爺の見本のような老人である。
二年ほど前の冬の朝、たいへんな汗を流しながら本を読んでいる。顔色を見ると一向平素と変らないが、なにしろあまりひどい汗なので、一人娘の花世が心配してたずねると、庄兵衛老、れいのお不動様の三白眼で、じろりと花世の顔を睨めあげ、
「馬鹿め、汗が、なんだ」
と、蚊の鳴くような声で叱りつけた。
よせばいいのに老人の冷水で、毎朝三百棒を振るので、その無理がたたり、この時、腸捻転を起しかけていたのである。いよいよドタン場になって、しぶしぶ按摩を呼ばせた。療治の間もとうとう音をあげなかったが、箱枕をひとつ粉々に掴みつぶした。
庄兵衛の強情と痩我慢を、書いていたのではきりがない。この頑固一徹で日毎に番所を風靡するので、さすがの奉行も年番方も庄兵衛には一目をおき、まるで腫れものにでも触るように扱っている。
ところで、この庄兵衛老に弱点がひとつある。
一人娘の花世のことになると、たちまち、なにがなんだかわからなくなってしまう。