Japanische Klassiker mit Furigana
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あごじゅうろうとりものちょう
顎十郎捕物帳
久生 十蘭
Lesen Sie 顎十郎捕物帳 (あごじゅうろうとりものちょう) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 18.022 Zeichen · 36 Bildschirme
阿古十郎は、枯葉を踏みながら、森の中へ入って行くと、突っ立ったままで、懐中から手の先だけだして、ぽってりした顎の先をつまみながら、
「お坊さん、いま、手前をお呼びとめになったのは、あなたでしたか」
「はい、いかにも、さよう……」
「えへん、あなたも、だいぶお人が悪いですな、わたしがお武家のように見えますか」
「なんと言われる」
「手前は、お武家なんという柄じゃない、お武家からにごりを取って、せいぜい御普化ぐらいのところです」
「いや、どうして、どうして」
「行というのは、まあ、たいていこうしたものなんでしょうが、でも、こんなところに坐っていると冷えこんで疝気が起きますぜ。……いったい、どういう心願でこんなところにへたりこんでいるんですか」
「わしはな、ここであなたをお待ちしておったのじゃ」
「手前を?……こりゃ驚いた。手前は生れつきの風癲でね、気がむきゃ、その日の風しだいで西にも行きゃあ東にも行く。……今日は自分の足がどっちへむくのか、自分でもはっきりわからないくらいなのに、その手前がここを通りかかると、どうしてあなたにわかりました」
老僧は、長い鬚をまさぐりながら、