Japanische Klassiker mit Furigana
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ふうきんとさかなのまち
風琴と魚の町
林 芙美子
Lesen Sie 風琴と魚の町 (ふうきんとさかなのまち) von 林 芙美子 (はやしふみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.372 Zeichen · 27 Bildschirme
「やかましいか! 子供は黙って食うがまし……」
私は一片の油揚を父の丼の中へ投げ入れてニヤッと笑った。父は甘美そうにそれを食った。
「珍しかとじゃろな、二三日泊って見たらどうかな」
「初め、癈兵じゃろう云いよったが、風琴を鳴らして、ハイカラじゃ云う者もあった」
「ほうな、勇ましか曲をひとつふたつ、聴かしてやるとよかったに……」
私は、残ったうどんの汁に、湯をゆらゆらついで長いこと乳のように吸った。
町には輪のように灯がついた。市場が近いのか、頭の上に平たい桶を乗せた魚売りの女達が、「ばんより! ばんよりはいりゃんせんか」と呼び売りしながら通って行く。
「こりゃ、まあ、面白かところじゃ、汽車で見たりゃ、寺がおそろしく多かったが、漁師も多かもん、薬も売れようたい」
「ほんに、おかしか」
父は、白い銭をたくさん数えて母に渡した。
「のう……章魚の足が食いたかア」
「また、あげんこツ! お父さんな、怒んなさって、風琴ば海さ捨てる云いなはるばい」
「また、何、ぐずっちょるとか!」
父は、豆手帳の背中から鉛筆を抜いて、薬箱の中と照し合せていた。
5 夜になると、夜桜を見る人で山の上は群った蛾のように賑わった。