Japanische Klassiker mit Furigana
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ふうちそう
風知草
宮本 百合子
Lesen Sie 風知草 (ふうちそう) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 44.107 Zeichen · 88 Bildschirme
そして低い声で、
「あるくのも、一緒でいいねえ」
と云った。ひろ子は、微に上気して重吉を見た。重吉は、あたりの乗客たちを全く見ていなかった。しかし、ひろ子を見ているのでもなかった。視線は窓の外を駛りすぎる外景に吸いよせられている。重吉の手と重吉の声とは、もしかしたら重吉が心づかないうちに、こうして生活はとりかえされた、という抑えがたい感銘を表現したのかもしれなかった。
夕闇の林間道をあるきながら、重吉は、
「今ごろ、電車、どうだろう」
と云った。
「こみかた?」
「来たとき位ならいいね」
「ひどいと思うわ、時間がよくないんですもの」
その駅にどっさりの乗客が待っているというのではなかったが、灯をつけて走って来た電車は満員だった。
「どうなさる?」
列に立っている重吉の背中を押すようにしながらひろ子があわてて相談した。
「おいや? あとだと、一時間待つのよ」
重吉は、黙って一寸躊躇した。
「のってしまいましょう、あんまりおそくなるわ」
そう云いながら、ひろ子は自分の体ごと重吉を車内におしこんだ。重吉は、ほかの乗客の足をふむまいとして無理な姿勢で立って、発車するとき、ひどくよろけた。