Japanische Klassiker mit Furigana
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かぜ
風
壺井 栄
Lesen Sie 風 (かぜ) von 壺井 栄 (つぼいさかえ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 38.702 Zeichen · 78 Bildschirme
「奥さん、ほんとにNさんのゆく先、ごぞんじないんですか。」
部屋の声が一度に静まった。茂緒はいきをのみ、
「ええ。」
「そんなはずが、あるでしょうか。あんなにお仲よしでしたのに。」
「…………」
「かくしてらっしゃるんでしょう。」
「いいえ。」
「おかしいですね。信じられませんわ。」
「そうですか。」
「まったく、油断がなりませんね。」
「そうですね。」
べつにわざとではなかったのだが、そのとぼけたような返事のしかたは相当なものだと、家主の細君の帰ったあと、H夫婦は腹をかかえて笑った。
「でも、こわいのよ、あの奥さん、魔法つかいの婆さんみたい鼻してね。」
扶佐子たちは、もちろん、いったきり姿を見せなかった。こんどは多枝たちがきて、
「わたしたちも、引っこそうと思いますの。一たんべつべつになりますわ。」
月賦の机を不払いのために月賦屋に引きとられてしまい、目ぼしいものは質に入れてほとんど何もなく、多枝がふとんをもってゆくと、Iは、着のみ着のままだった。ずるいくせに卑屈なIは、寒そうに肩をすくめ貧乏ゆるぎをしながら、
「奥さん、電車賃かしてもらえないですか。」
電車賃もなくて、彼はどこへ越してゆくのであろうか。