Japanische Klassiker mit Furigana
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まと
魔都
久生 十蘭
Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme
気がついて見ると引っ繰り返すようなその大騒ぎの真っ只中で、居住いも崩さずに独り端然と酒盃をあげている人物がある。それは年のころ卅歳ばかりの白皙美髯の青年紳士で、一目でそれと知れる倫敦仕立のタキシードをきっちりと身につけ、襟の釦穴には婀娜に※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)したる臙脂色のカーネーション。大きな金剛石の指輪をはめた白い嫋やかな指の間にウイスキー・ソーダのコップを持ちながら、少し反り身になって馬鹿騒ぎを眺めている。その悠揚迫らざる態度というものは実に異様であって、さながら帝王が臣下共の無礼講をニンマリ片笑み浮べながら愉し気に眺めているといった風。気障にも見えず嫌味でもなく、それがぴったりと板についているところがはなはだ以て妙なのである。
作者はこの人物を大分奇妙がったが、或いは読者の中には、こんな事が何が奇妙だと立腹される向きもないではないと思うから、手廻しよく大いに怪しいその次第をもう少し精細に述べて見ように、まず何にもまして怪しいのはその異相である。異相といっても藪覗の菊面のというのではない。諸君の中には手にされた方もあろうが、その人相は神宮館発行の例の九星運勢暦の附録についている「人相の部」