Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まと

魔都

久生 十蘭

Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme

Aozora Bunko

第四回

十一、加十、逆上する事 並に卑賤の相の事

「おい、真名古君、あまり子供じみたことをいいたまうな。これは一検察吏の潔癖や自尊心の問題ではなくて、日本政府の権威や体面に係わりを持つ重大な事件なのだ。君は日頃剛直を売物にしてるそうだが、政府の方針を変えてまで君の偏執を尊重するわけにはゆかんじゃろう。……ねえ、君もそう固いことばかりいわずに、どうか判ってくれたまえ」

真名古は何事も聞かぬような冷陰な面持で、静かに外套に腕をとおすと入口の方に歩み出す。林は急に顔を綻ばしながら大急ぎで真名古に追いつくと、

「まアまア、真名古君」

とその袖を執える。真名古は無言のままつれない素振でその袖を払うと帳場の方へ歩いて行き、そこで半紙と硯箱を借り受けると、閑々たる態度で墨を磨り、やがて毛筆を取り上げて筆先にタップリと墨汁を含ませると、字劃の正しい字で、

辞職願

と書き起したのである。

第四回

十一、加十、逆上する事

並に卑賤の相の事

安南にボーキサイトの鉱山を持つ林コンツェルンの親玉林謹直にとっては、宗皇帝が突然微行で日本へ来遊されたということははなはだ以て迷惑千万なのである。

林コンツェルンを押退けてその現勢力に取って代ろうとする日興コンツェルンが、皇帝の反対党、すなわち親仏閥の李光明擁立派を抱込んで、さまざまに暗躍しているという風評がチラチラ聞こえる折だったから、皇帝