Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まと

魔都

久生 十蘭

Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme

Aozora Bunko

百人分ぐらいの茶碗がそこに出し揃えられてあるほか、五つばかりの曲突まで押し並べられ、燗鉄瓶がその上で松風の音を立てている。

十畳ばかりの板敷の向うには、三段になった配膳棚があって、一つ一つ小蒲団で包まれた鰻丼が五十ほどズラリと並べられ、つまみ物の小丼が、これも所も狭く棚の上下に用意されている。

賭場はいま盛っているとみえ、壺皿を伏せる合間々々に凄まじいばかりの人声が沸き立つ。

その中に、時々、

「半」とか

「丁」

と咆哮するのはルーブ・ベースであろう。

見ると、ルーブ・ベースは盆茣蓙の横へ、小牛のような巨体を投げ出してだらしなく寝そべり、張方を勤める、もとさる一流新聞社の外報記者で、猿のような顔をした某何太郎という男を顎で指図している。

胴を取っている入舟網之助は、東北のさる高等学校の一年まで行き、サンフランシスコへもちょッと流れていった事のある男で、二枚重ねた大きな座蒲団の上に押胡坐をかき、赤い顔をテラつかせながら、

「さア、張った張った、今度はいい目が出る」

なんていうお定りをべらべらやる合間に、

「大丈夫、大丈夫」

「出かした、大当り」

などと、口をおかずに愛想を振り撒いている。