Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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まと

魔都

久生 十蘭

Lesen Sie 魔都 (まと) von 久生 十蘭 (ひさおじゅうらん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 293.999 Zeichen · 578 Bildschirme

Aozora Bunko

これに飛びついてぶら下ると、わずかに爪先の届くところから土蔵の腰巻が始まる。貝折釘に飛び付きさえすれば容易に下まで降りることが出来るが、土蔵の釘は料理場の棟より約一尺ほど下についているので、この四尺の露次を隔ててうまくそれに飛び付くことは、よほどの熟練を要するわけである。真名古は「すず本」を出て、質屋と庇合の露次口へ廻り、土蔵の壁に梯子を立て掛けて先ほどの貝折釘の側まで登って行き、折釘の周囲の壁面を隈なく懐中電燈で照らして見る。見廻すほどもなく、その壁面に、ある人間の行動を説明するに足る、興味ある象形文字が描かれているのを発見した。それは何であるかといえば、爪で引っ掻いたような三本の掻き痕である。土蔵の壁は堅いのでさほど深くは抉れていないが、それでも明瞭に読み取ることが出来るほどで、貝折釘の二寸ほど下のあたりから垂直に一尺ほど掻き取られてある。証拠明白。あののろまの山木は、貝折釘を掴み損ねて下まで叩き落ちたということがはっきりとわかる。この堅い壁にこれほどの爪痕を附けるとすれば、さぞ爪先が傷んだことであろう。現に爪痕の最後のところには、一点血の惨んだようなところがある。