Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
けれど時の桃園帝からは、いたく頼もしく思されていた一人である。
他の十七卿の堂上が、問罪謹慎をうけるはめとなるや、有村は忽然と姿を隠した。
自殺したという説――その頃、もっぱらであった。
「幕府などの手に、自由を縛られて堪るものか」
という気概の有村、自殺などをする筈がない。コッソリ蜂須賀家の奥に隠れ、長々と寝たり起きたりして垂加流の神学書、孫子呉起の兵書などを耽読していた。
重喜とよく議論もやる。
兵学、弓術、馬術、邸内でできることなら何にでも対手になる。居候のくせにして三位卿有村、妥協が嫌いだから時々口舌火を発し、ひいては、ただちに、幕府討つべし! ということになる。これには阿波守もてこずるらしい。
一兵一矢の蓄えもなく、居候をしている素寒貧の若公卿には、どんな過激な議論も吐けようけれど、重喜には、譜代の臣、阿波二十五万石の足枷がある。そう、滅多に動けたものではない。
たとえ、尊王の赤心、反徳川の意気、胸に炎々たるものがあっても、下手なことをしたひには、藩祖正勝以来の渭之津の城の白壁に、矢玉煙硝玉の穴があくはめとなる。
「殿! おしのびのご来客、ただ今お着きになりました」