Japanische Klassiker mit Furigana
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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Lesen Sie 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 262.100 Zeichen · 523 Bildschirme
悪行善心
そして、松平家の奥へ入った――。
たしかに、この夜、かれは松平家の脇門から、奥座敷へ入ったに相違なかった。だが――どうしたのだろう? 幾日たっても、法月弦之丞、あれッきり屋敷から出た様子もなし、また、一月寺へも帰ってこない。
悪行善心
「喧嘩だッ」
「喧嘩だ、喧嘩だ」
朝ッぱらからの騒ぎである。
五十間の両側に、暖簾をならべている飲食店の内から、客や女が、いっせいに外へ飛びだしてみると、廓の大門口から衣紋坂の方へ、一人の侍が、血刀を持ったまま、盗ッ人のように逃げて行った。
「斬られた!」
「誰だ誰だ、斬られたのは」
「対手は逃げてしまった――早く、早くしろいッ」
「オオ、こいつア助からねえ、肋にかけて斬られている」
「助からねえッて、見ている奴があるものか」
「オイ弥次馬、ばかな面をして見物していねえで、手を貸せよ、手を!」
ちょうど、大門の高札場前。
喧嘩や斬合いは、この廓の年中行事。別に珍らしいほどでもないが、夜と違って朝ッぱらの血まみれ騒ぎ、真っ黒になってワラワラと駈け集まった。
肩から背すじにかけて、むごい太刀傷を浴びせられ、そこにうっ伏していた男は、この辺の者とみえて吉原つなぎの袷袢纏に、算盤玉の三尺をしめ、ウーム、ウームと、土を吹いて苦しげに呻いている。