Japanische Klassiker mit Furigana
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めいせつじじょでん
鳴雪自叙伝
内藤 鳴雪
Lesen Sie 鳴雪自叙伝 (めいせつじじょでん) von 内藤 鳴雪 (ないとうめいせつ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 192.693 Zeichen · 377 Bildschirme
三度の食事はその頃始まっていた、常平舎というから弁当の仕出しをさせた。この常平舎は東京到る所にあって頗る書生どもに便を与えた。中には一家族が煮炊の煩累を避けてこの常平弁当を喰べる者もあるとさえ聞いた。この新銭座に居た頃忘れもせぬのは年越しの晩であったが、つい近傍の浜松町の寄席へ由井氏と共に行った。影絵の興行で、折々見物の席も真闇となる、そこでその真闇が明るくなった際、気が付いて見ると私の懐中がない。今しがた、布団代を払ってそのまま懐中を傍へ置いたのだが、右の真闇に乗じて誰かが盗んだのらしい。席亭へも話して見たが捜索の道がない。やむをえずそのまま帰寓したが、この懐中は最近二分で新らしく買ったのである。金はたった二分残っていたのだから、それらはさほど惜しくもないが、この懐中には実印が入っていた。もしもそれを他人に使用されては如何なる迷惑が来るかも知れぬから、それのみが懸念で堪らぬ。今日なら印形の遺失とか盗難とかの届をするのだが、その頃はそんな道もないから、せめてもの申訳でもあるし、また入用でもあるので、新たに実印を彫刻せしめた。私はかつてもいった通り、母方の伯母聟の中島翁に師克という実名を貰ったが、師克の師は憎まれ者の師直の師と同じなのが厭なので、自分で永貞と改めた。