Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

土井の邸跡で、借地なのです。向い側は広い馬場でした。昔将軍がお鷹野のお小休に、食後の箸を落されたといういい伝えで、二本の大杉が鬱蒼とそそり立っていて、遠く白山坂上からも見えました。朝など雉子の鳴く声がします。夜は梟の声があちこちにします。家は歪みかかって支柱のある小さな古家でしたが、水がよいのと、静かなのとを主人が喜んで極めたのでした。

住いが近くなったので、団子坂への往き来が繁くなります。観潮楼の広い二階は書斎と客室とになって、金屏風が一双引いてありました。これも母の趣味なのです。そこで「雲中語」などの合評会が開かれ、後には歌会も催されました。

或時お兄様が、「今度の歌会に石という題があるが、お前も詠んで見ないか」とおっしゃいました。

千曳の石胸に重しと夢さめて

なほ夢の間の安さをぞ思ふ

と書いて見せましたら、ただ笑っていらっしゃいました。それきり詠めともおっしゃらず、詠みもしませんでした。それでも、「歌会の日には手不足だから手伝いに来ておくれ」とおっしゃるので、下座敷に行っておりました。レクラム本から選んで、西洋料理めいたものをあれこれと作るのでしたが、母はバタ臭い物はお嫌いなので、お塩梅もなさいません。