Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

木の狭い橋を渡って、土手へお上りになりました。その堤は毎日通う小学校の続きになるので、名高い大橋に対して小橋という、学校の傍の石橋の下になって、細い流が土手下を通っています。私は近くを散歩なさるのかとばかり思って、傍へ寄って、「お兄さん、遠くまでいらっしゃるの」と聞きました。大好きなお兄様ですけれど、何だか遠慮で、あまり話などはしないのでした。それまで何も仰しゃらなかったのが、「いや」と一言だけで、左へむけてお歩きになります。この辺はちょっと家がありますが、また両側に何もない長い長い土手が続くのです。あまり通る人もありません。私は心細くなりました。お母さんにお断りもしないで、不断著のままで外へ出たのを、叱られはすまいかという心配と、穿いているぽっくりという下駄、赤塗の畳付で綺麗な鼻緒がたって、初めは他所ゆきだったのが、古くなってすっかり減ってしまい、庭下駄になっていましたが、昔ですから塗が堅く、赤色もそれほど剥げてはいませんかった。その前鼻緒が弛んで来てその歩きにくいこと。それをお話するにはお兄様の様子が、どうもいつもと違ってつぎほがないので、我慢して指でまむしをこしらえて、とぼとぼ附いて行きました。