Japanische Klassiker mit Furigana
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おうがいのおもいで
鴎外の思い出
小金井 喜美子
Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme
ただ家庭のことで、かれこれいわれると困るのでなあ。」
苦笑せられるお顔を見てはいられません。今まで決してそんなことなどおっしゃらなかったのに、何かお気にかかるのでしょう。
「折があったら話して置いておくれ。」
「ええ、それは誰でも親しい者は知っていることですから。」
石本氏は長く陸軍次官をお勤めになって、立派なお方でしたけれど、強いところもおありになるのでしょう。重い御持病がおありでしたから、お気の立った時などはおむつかしいのでしょう。お兄様は十分控目にして、いつも謙譲な態度でいられますが、時には衝突なすったこともあるように聞きました。尤も職務上のことについては、職を賭しても争われたのは勿論です。
それまでの陸軍大臣は寺内伯で、お兄様はその信任を得ていられましたが、政変のためにお罷めになって、石本次官が昇進なさいましたのは、明治四十四年八月末のことでした。九月も半過ぎでしたろうか、官邸へお移りになった石本夫人が幹事の同窓会があって、私は始めて官邸というものに這入りました。いつもより人も大勢集っていられます。きらびやかではなく、荘重とでもいいましょうか、お邸はなかなか広いようでした。