Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おうがいのおもいで

鴎外の思い出

小金井 喜美子

Lesen Sie 鴎外の思い出 (おうがいのおもいで) von 小金井 喜美子 (こがねいきみこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 127.675 Zeichen · 254 Bildschirme

Aozora Bunko

藩主は早く夫人が亡くなられて、お子様もなくてお独りでした。お手廻りのお世話をさせるために、江戸でお召抱えになったのがそのお藤さんで、当時はそんな邸向の奉公人ばかりを口入する請宿があったのだそうです。どんな家の生れか知りませんが、年も若く、美しくて利発な人で、請宿では隠れた処にも痣や黒子のないように、裸体にして調べたとかいいました。女芸一通りは出来たので、お国に落ちついてからは、召仕に習字のお手本を書いて渡したとか聞きました。

お国のお山の上に社があって、何をお祀りしてありましたか、家中の信仰も厚く、皆お参りをするのでした。それで心願の人たちが上げた額なども多い中に、松の木に藤の咲きかかった大きな額がありました。いつ誰が上げたのか、何の願だろうかと噂をしましたが、これは清水さんがお藤さんを慕って奉納せられたので、維新の騒がしさが静まって、殿様始め重な家来たちが東京住いになりました頃、御殿を下ったお藤さんは清水さんの奥さんにおなりになったものですから、これはきっと神様の御利益だったろうといわれました。それまで清水さんは、久しくやもめでいられたのです。