Japanische Klassiker mit Furigana
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こうとう
黄灯
田中 貢太郎
Lesen Sie 黄灯 (こうとう) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.262 Zeichen · 21 Bildschirme
書生の顔は正面に主翁の眼に映った。
「豆腐屋、お前は俺の云うことを聞くんだぞ」
主翁はがたがたと震えた。
「怖がることはない、俺の云いつけどおりするなら、怖がることも何にもない」
「は、はい」
書生は隻手を懐に入れて懐の中から何か出した。それは黒い襷のように輪にした小紐であった。
「これを殿様の頸に捲いて来い、ただ捲いて来さえすれば好い、お前がどんな音をさしたって、起きる者は無いから、大丈夫だ、捲いて来い」
「は、はい」
「早く、云うとおり捲いて来い、云うことを聞かないのか、早く捲いて来い、ただ捲いて来さえすれば好い、べつに何もしなくても好い」
小紐は主翁の手に懸った。主翁は震い震いそれを手にした。
「それ、早く往って捲いて来い」
主翁はしかたなく榻の方へ歩いて往った。歩きながら何人かに眼を覚まされて見られては大変なことになると思った。彼の足は何を踏んでいるのか判らなかった。
主翁は伯爵の傍へ往った。伯爵は唸っていた。主翁は小紐を出して、そっと伯爵の頸に捲こうとした。と、小紐は風に吹き寄せられるように手許に寄って来た。主翁はこれは失敗ったと思って、また顎の下からその紐をかけたが、かけてしまうとまた寄って来た。