Japanische Klassiker mit Furigana
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こうとう
黄灯
田中 貢太郎
Lesen Sie 黄灯 (こうとう) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.262 Zeichen · 21 Bildschirme
入口の障子をがたがたと開けて、学生マントを着た小兵な学生が、雨水の光る蛇目傘を半畳にして、微暗い土間へ入って来た。もう明日の朝の準備をしてしまって、膳さきの二合を嘗めるようにして飲んでいた主翁は、盃を持ったなりに土間の方へ目をやった。
「いらっしゃい」
それは見覚えのある坂の下のお邸にいる書生さんであったが、たしかにどのお邸の書生さんと云うことは浮ばなかった。
「絹漉がありますか」
「絹漉ですか」主翁はこう云って、食卓の向うでとうに飯をすまして行火にあたっている女房の方を見て、「絹漉とおっしゃるのだ、まだ少し残っているのだな」
「ああ、すこしありますよ」女房は入口の方へ体を捻じ向けて、客を透すようにしたが、障子の陰になって客の姿は見えなかった。が、それでも、「いらっしゃいまし」
「三つあれば好いのですが」と云って、書生は咳を三つばかり続けてした。
「三つぐらいならあります、何方様でございましょう」
女房は腰をあげようとした。
「下のお邸さ、ええと」主翁はまだ思い出せない。
「下の桐島ですよ」と書生が云った。
「そうだ、桐島さんだ、何時も胴忘れをしましてね、で、絹漉は、ちりか何かになされるので」