Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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こうとう

黄灯

田中 貢太郎

Lesen Sie 黄灯 (こうとう) von 田中 貢太郎 (たなかこうたろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 10.262 Zeichen · 21 Bildschirme

Aozora Bunko

主翁は足が進まなかった。

「あんなことをしてるから、いくらお前が側へ往ったって判らない、ただ、その紐を、頸へ掛けて来さえすれば好い」

主翁はしかたなしに伯爵の方へ近寄って往った。伯爵は大きな呼吸をついていた。主翁は握りしめていた小紐の輪を両手に拡げて、背の高い伯爵の後から投げかけた。紐はふわと伯爵の体にかかった。と、同時に伯爵の体は仰向に倒れた。主翁は書生の側へ逃げて往った。

「よし、よし、うまくいった」

書生は主翁を迎えて気もちよさそうに笑った。主翁はその詞を聞きながら後の方をふり返った。夫人と運転手が伯爵の枕頭に立って何か囁いていたが、やがて運転手は夫人と別れてあたふたと部屋の外へ出て往った。

「人が来てはめんどうだから、あいつ逃げて往く処だ、もう、俺達の用も済んだから、いっしょに帰ろう」

書生が往きかけるので、主翁もすぐ後に引添うて往った。池の側や林の中に書生の姿が見えた。主翁はただ書生に遅れまいと思って跟いて往った。

微暗い門番の室の燈火が見えた。真暗い空から毛のような霧雨が降っていた。書生の体はもう耳門から出た。主翁もその後から耳門を出たが、ほっとしたような気になって心がのびのびした。