Japanische Klassiker mit Furigana
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てらだとらひこ
黄道
和辻 哲郎
Lesen Sie 黄道 (てらだとらひこ) von 和辻 哲郎 (わつじてつろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 28.971 Zeichen · 59 Bildschirme
で我々は、一方は四谷の方から他方は赤坂を経て、千駄が谷まで延焼してくることを恐れた。まさかと思いつつも、その恐れは二日の夕刻までだんだん高まっていった。
他方でこの日はすでに食糧難について注意を喚起された。米はもう手に入らない。メリケン粉も駄目である。僅かに少量の干うどんとさつま芋とが手に入ったきりであった。たとい焼けないにしても、当分は芋粥にして食いのばさねばならぬ。がそれも長くは続かない。そのあとには飢餓が来る。その当時は関西からあれほど迅速に食糧を回送して来ようとは思わなかったので、我々は食うもののない時期を予想してその対策を考えた。がそこにはなんの手段もなかった。我々は飢餓の危険に対しても覚悟をきめる必要に迫られたのである。
そういう不安な日の夕ぐれ近く、鮮人放火の流言が伝わって来た。我々はその真偽を確かめようとするよりも、いきなりそれに対する抵抗の衝動を感じた。これまでは抵抗しがたい天災の力に慄え戦いていたのであったが、このときに突如としてその心の態度が消極的から積極的へ移ったのである。自分は洋服に着換え靴をはいて身を堅めた。米と芋と子供のための菓子とを持ち出して、火事のときにはこれだけを持って明治神宮へ逃げろと言いつけた。