Japanische Klassiker mit Furigana
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くろゆり
黒百合
泉 鏡花
Lesen Sie 黒百合 (くろゆり) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 78.148 Zeichen · 154 Bildschirme
お兼はじっと見て物をも言わぬ、その一言も発しないのを、感に耐えたからだとも思ったろう。滝太郎は極めて得意な様子でお兼の顔を見遣りながら、件のリボン飾を指して、
「これがね、一番新しいんだぜ。ほら、こないだ総曲輪で、姉やに掴まった時ね、あの昼間だ、あの阿魔、知事の娘のせいでもあるまいが、何だか取難かったよ、夜店をぶらついてる奴等の簪を抜くたあなぜか勝手が違うんだ。でもとうとう遣ッつけた、可い心持だった、それから、」
と言って飜って向うへ廻って、一個の煙草入を照らして見せ、
「これが最初だ、富山へ来てから一番前に遣ったのよ。それからね、見ねえ。」
甚しいかな、古色を帯びた観世音の仏像一体。
「これには弱ったんだ、清全寺ッて言う巨寺の秘仏だっさ。去年の夏頃開帳があって、これを何だ、本堂の真中へ持出して大変な騒ぎを遣るんだ。加賀からも、越後からもね、おい、泊懸の参詣で、旅籠町の宿屋はみんな泊を断るというじゃあねえか。二十一日の間拝ませた。二十一日目だったかな、おいらも人出に浮かされて見に行ったっけ。寺の近所は八町ばかり往来の留まる程だったが、何が難有えか、まるで狂人だ。