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Japanische Klassiker mit Furigana

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いしがおごる

いしが奢る

山本 周五郎

Lesen Sie いしが奢る (いしがおごる) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.304 Zeichen · 45 Bildschirme

Aozora Bunko

「馬でも申付けましょうか」

仲田もからかうように云った。

「それはいい、すぐ云いつけてくれ」保馬は手紙を巻きながら立った、「久しく籠居したから、馬でとばすのは思いつきだ、頼むよ」

「冗談から馬ですな、やれやれ」

仲田は口をすぼめて苦笑した。よく晴れた午後で、海からしきりに風がふいていた。保馬はその風のなかを爽快にとばしていった。望湖庵へ登る山道では、落葉が雨のように舞っていた。いしは珍しく濃い化粧で、紫色の地にぼかしで千草を染めた縮緬の小袖に、薄茶色の綾に菊の模様の帯をしめていた。濃い白粉のためか、顔が硬ばっているようにみえるし、紅をさした唇はむしろ暗い感じであった。

「嫁にでもゆくようだな」保馬は眩しそうに眼をそらした、「まるで人が違ったようにみえる」

「お気に召さないでしょうか」

保馬は微笑しながら、「いいよ」というふうに頷いた。いしは嬉しそうに肩をすくめた。

「今日はお願いがありますの、一生にいちどのお願い」廊下の途中で、いしは保馬をおがんで云った、「いちどだけでようございますからいしに奢らせて頂戴」

「――どうするんだ」

「二人だけでゆっくりしたいんです、今日はでかけてみんな留守なんです、ねえ、お願いですからうんと仰しゃって」