Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

「どうおしだよ、おせん」

「お母さん、あたしゃ、どうしよう」

「まァおまえ。……」

「吉ちゃんが、――あの菊之丞さんが、急病との事でござんす」

「なんとえ。太夫さんが急病とえ。――」

「あい。――あたしゃもう、生きてる空がござんせぬ」

「何をおいいだえ。そんな気の弱いことでどうするものか。人の口は、どうにでもいえるもの。急病といったところが、どこまで本当のことかわかったものではあるまいし。……」

「いえいえ、嘘でも夢でもござんせぬ。あたしゃたしかに、この耳で聞いて来ました。これから直ぐに市村座の楽屋へお見舞に行って来とうござんす。お母さん、そのお七の衣装を脱がせておくんなさいまし」

「えッ、これをおまえ」

「吉ちゃんが、去年の芝居が済んだ時、黙って届けておくんなすったお七の衣装、あたしに着ろとの謎でござんしょう」

「それでもこれは。――」

「お母さん」

おせんは、部屋の隅に立てかけてある人形の傍へ、自分から歩み寄ると、いきなり帯に手をかけて、まるで芝居の衣装着けがするように、如何にも無造作に衣装を脱がせ始めた。

「お止し」

「いいえ、もう何んにもいわないでおくんなさい。あたしゃお七とおんなじ心で、太夫に会いに行きとうござんす」