Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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おせん

おせん

邦枝 完二

Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme

Aozora Bunko

「吉ちゃん。おかみさんや、ほかの人達にお願いして、あたしがたった一人、お前の枕許へ残してもらったのは、十年前の、飯事遊びが、忘れられないからでござんす。――みんなして、近所の飛鳥山へ、お花見に出かけたあの時、いつもの通り、あたしとお前とは夫婦でござんした。幔幕を張りめぐらした、どこぞの御大家の中へ、迷い込んだあたし達は、それお前も覚えてであろ。絵にあるような綺麗な、お嬢様に何やかやと御馳走を頂戴した挙句、お化粧直しの幕の隅で、あたしはお前に、お前はあたしに、互にお化粧をしあって、この子達、もう小十年も経ったなら、きっと惚れ惚れするように美しくなるであろうと、お世辞にほめて頂いた、あの夢のような日のことが、いまだにはっきり眼に残って……吉ちゃん。あたしゃ今こそお前に、精根をつくしたお化粧を、してあげとうござんす。――紅白粉は、家を出る時袱紗に包んで持って来ました。あたしの遣いふるしでござんすが、この紅筆は、お前が王子を越す時に、あたしにおくんなすった。今では形見。役者衆の、お前のお気に入るように出来ますまいけれど、辛抱しておくんなさい。せめてもの、あたしの心づくしでござんす」