Japanische Klassiker mit Furigana
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おせん
おせん
邦枝 完二
Lesen Sie おせん von 邦枝 完二 (くにえだかんじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 74.074 Zeichen · 148 Bildschirme
それと違ってあたしのは、おまえに聞かせるお礼じゃないか。さ、ひとつついでに、背中を流してあげようから、その手拭をこっちへお出し」
「いいえ、汗さえ流せばようござんすから……」
「何をいうのさ。いいからこっちへお向きというのに」
二十二で伜の千吉を生み、二十六でおせんを生んだその翌年、蔵前の質見世伊勢新の番頭を勤めていた亭主の仲吉が、急病で亡くなった、幸から不幸への逆落しに、細々ながら人の縫物などをさせてもらって、その日その日を過ごして早くも十八年。十八に家出をしたまま、いまだに行方も知れない伜千吉の不甲斐なさは、思いだす度毎にお岸が涙の種ではあったが、踏まれた草にも花咲くたとえの文字通り、去年の梅見時分から伊勢新の隠居の骨折りで、出させてもらった笠森稲荷の水茶屋が忽ち江戸中の評判となっては、凶が大吉に返った有難さを、涙と共に喜ぶより外になく、それにつけても持つべきは娘だと、近頃、お岸が掌を合せるのは、笠森様ではなくておせんであった。
「おせん」
「あい」
「つかぬことを訊くようだが、おまえ毎日見世へ出ていて、まだこれぞと思う、好いたお方は出来ないのかえ」
「まあ何かと思えばお母さんが。