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Japanische Klassiker mit Furigana

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このにぎりめし

この握りめし

岸田 国士

Lesen Sie この握りめし (このにぎりめし) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.649 Zeichen · 27 Bildschirme

Aozora Bunko

六

行き倒れと……二軒茶屋か……チヨツ、旅のもんだろう」

「そんなこと知らないわ。早くしてね、下で子供が待つてるから」

増田健次は、しぶしぶ腰をあげる。まだ将棋盤を見つめてはいるが、むろん、心こゝにあらじで、実は行き倒れの処置について、法規になんとあつたかを想い出そうと焦つているのである。

「じや、ちよつと行つて来るわ。あとの続きはまた明日の晩と……」

出かける背中へ、岡本が声をかけた。

「おい、おい、握り飯を持つてつてみろよ」

が、その声は耳にはいつたのか、はいらないのか、そのまゝ、あたふたと、増田は階段を降りて行つた。

六

二軒茶屋というのは峠から谷へ降りようとする村はずれの紅葉と若葉の頃はバスの乗客がいずれも眼を輝やかせて絶景をたゝえる、県道と村道との岐れ道であるが、その人里をはなれた道ばたにスキイ帽をかぶつた屈強そうな男が、手提を手拭で肩にかついだまゝ、うつ向けに倒れ、そのからだは半ば既に雪の中に埋つていた。

肩をつかんで揺すぶつてみたが、なんの手応えもない。増田健次は、大声で叫んだ。

「おい、しつかりしろよ、大丈夫だぞ、脈もしつかりしてるじやないか」