Japanische Klassiker mit Furigana
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このにぎりめし
この握りめし
岸田 国士
Lesen Sie この握りめし (このにぎりめし) von 岸田 国士 (きしだくにお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.649 Zeichen · 27 Bildschirme
岡本は将棋盤に向つて、しきりに詰め手の研究をしていた。二三日前に、さんざん増田にいじめられたからであろう。二人はすぐに駒を並べだした。序盤戦はいずれも慎重をきわめ互に、口舌を以て牽制これ努めるという風であつた。
「なんだ、その手は、どうもスパイの臭いがするぞ。いかん、スパイはいかん、争われんもんだ、お里は………」
「脛に傷もつなんとやら……後暗くなければそれでよろしいが……」
「よし、こういこう。単刀直入、一戦を交えよう」
「戦にも法則がある。玉砕の覚悟と見えたがどうじや」
「法則は人によつて活き、かつ死すだ。危いかな、法の虜……」などと、他愛なく、応酬する二人の眼が同時に、廊下の外に向けられた。慌しく階段を上つて来る女の足音である。
「ちよつと、増田さんいなさるかね」
と、障子をガラリと開けたのは、宿の娘、近来おしやれに余念のない、やつと十八になる富士子である。
「ねえ、増田さん、二軒茶屋のほら、滝の見える坂道のところに、行き倒れがいるんですつて……。たつた今、駐在へ知らせに来た子供がいるのよ。大丸屋のお神さんが、それをまたうちへ連れて来てくれたの」
「なんだ、慌てゝ言いに来たのは、そんなことかい。