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Japanische Klassiker mit Furigana

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『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ

たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】

佐藤 春夫

Lesen Sie たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集【底本画像有】 (『てっぽうさへいじ』ついでにもひとつ) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 23.182 Zeichen · 48 Bildschirme

Aozora Bunko

「お前さんでなく、主人を電話口へ出しなさい」

「わたくしが主人ですよ」

「書生ではない? それでいて道灌山がわからないのかい?」

「道灌山ではわかりませんが、どなたですか」

「道灌山だよ。どなたもヘチマもないよ、お前さんの神さんの姉さんを忘れたのかい?」

と語気もはなしも、益々出でて益々おかしい。

「わたくしの家内はひとりっ子で、姉さんも、兄も弟も無いはずですが、何かの思い違いではありませんか、それとも電話の間違いではありませんか――こちらは××局の○○○番ですが」

「電話の間違いだろうって? とぼけなさる勿!」

と云い放って置いて、先方では何やらコソコソと内輪話をはじめた様子が洩れ聞えて来るのであった。

わたくしは、しばらく受話器をさし置いたまま、腑に落ちない気持のうちに、さては? と思いはじめた。何かわたくしの身寄りだと称することを他人に証明する必要のある人間が向うの電話口にいるのだな、きっと! それにしてもわたくしの妻の姉であるという事は果して何の利益があるというのであろうか。とても思いも及ばない。だが、わたくしは何事とは知らず、この不可解な電話のなかに、好もしからぬ犯罪の臭気を感じながら、ぼんやりと、電話器の前に立っていると、ベルは再びけたたましく鳴り出した。