Japanische Klassiker mit Furigana
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あじさい
たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集
佐藤 春夫
Lesen Sie たそがれの人間 佐藤春夫怪異小品集 (あじさい) von 佐藤 春夫 (さとうはるお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 41.277 Zeichen · 84 Bildschirme
「これや、天皇陛下さまじゃろうか」
と、言ったそうである。この無邪気な驚きの言葉は、今、私のうちで流行言葉になっている。
さて、私の父が自転車へ乗りだしてから、私の故郷の地方でもだんだんと父の真似をして自転車へ乗る人がふえて来た。そうしてその人たちは、時々には道ばたで遊んでいる子供たちを怪我させたりしたと見える。ある時、私の父が遠乗りをして海岸の漁師村を通りすぎようとすると、道で遊んでいた子供がびっくりした声で、
「お母さん、また二輪車が来たよう!」
と、慌てて母を呼んだ。
「黒いのか」
と、その子供の母が問うた。
「赤いのじゃ」
「赤いのなら危うない」
と、お母さんは答えたそうだ。私の父のその頃の自転車は小豆色に塗ってあった。そうして外の人たちのは大てい黒いのであった。黒い自転車がよく子供に怪我をさせたものと見える。私の父は時々その村を通ったがまだ一度も子供をひいたことがなかったので、そのお母さんは「赤いのなら危うない」と答えたのであろう。私の父はふるくから乗っていただけに外の人より上手であったのだろう。それでも、一ぺん、その小豆色の自転車をひどいことにして帰って来たことがあったのを私は覚えている。