Japanische Klassiker mit Furigana
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ちくしょうだに
ちくしょう谷
山本 周五郎
Lesen Sie ちくしょう谷 (ちくしょうだに) von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 69.788 Zeichen · 138 Bildschirme
――故人の名誉にかかわるから云えない。
西沢半四郎はそう答えたが、織部の後任を命ぜられた野口助左衛門は、事務引継ぎに当って帳簿の不正操作を発見し、出納会計から五百両ちかい金が、織部の印判によって引出されていることをつきとめた。そこで、与田滝三郎は西沢を呼び出したうえ、決闘の理由がその点にあったのかどうか、と訊問したところ、西沢はやはり返答を拒み、「自分としては故人の名誉のためになにも云えない」と云い張った。
朝田家は大目付によって調査され、故人の妻きいや、家士、召使たちも訊問された。しかし五百両という金額がいかに使われたか、ということはついにわからず、老臣協議の結果、「家禄を半減して返済に当てる」ということになった。これは織部の人柄と、それまでの勤めぶりを考慮された寛大な沙汰で、本来なら遺族は改易追放をまぬかれなかったであろう。以上のことを隼人は江戸で知った。そして織部の遺児、小一郎のうしろみをするようにと、帰国を命ぜられたのであった。
朝田の家禄は二百三十石で、役料とも二百五十石だったが、役料は家禄ではないから、半減というと百十石になる。そのころ米価は米一俵(四斗四升)が一分と六十匁から七八十匁に当っていたので、五百両を返済するには、概算して約八年ちかくかかる。