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Japanische Klassiker mit Furigana

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ばちあたり

ばちあたり

山本 周五郎

Lesen Sie ばちあたり von 山本 周五郎 (やまもとしゅうごろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 22.391 Zeichen · 44 Bildschirme

Aozora Bunko

それから彼は急に姉を見た、「テープ・レコーダーがどうしたんですって」

「もう話したじゃないの、忘れっぽいのね」

「いいえ聞きませんよ、あたしは聞いた覚えはありませんよ」

「そうかしら、敏夫がおかあさんの声をレコードに取ったっていうことよ」と姉はまたタバコに火をつけながら云った、「啓さんには話さなかったかしらね、こうなのよ」

私は窓外をぼんやり眺めていた。時間があったら読むつもりで、三冊ばかり本を持って来てあった。十年以上も臨床専門にしばられて、初めにこころざした研究のほうは埃まみれになっている。このままで一生を終りたくない、私はまだ三十七だ。

――三十七、おお、と私は心の中で呟やいた。もうすぐ四十だぞ、もうすぐ、……あと三年でだ。

私は口の中で熱っぽい匂いがするのを感じた。鉄の灼けるような、イオン臭に似た匂いである。私は網棚の上にある自分の手提げ鞄の中から、持って来た本を出そうと思った。そうしなければならないと思ったが、鞄の中にある応急用の診察器具や薬品類に気づくと、それだけで気持が重くなり、立ちあがって手を伸ばす力がなくなるのを感じた。

「それでおかあさんが怒って、敏夫、ちょっとおいでって云ったのよ」