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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひととき

ひととき

宮本 百合子

Lesen Sie ひととき von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.370 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

を一杯ためて居たとか云う事を、前から私より親しくして居た人々からきくと、ついつい涙を押えられなくなってしまう。

何と云う痛ましい事かと思うと、彼の人の大まかな、おっとりした物ごしが一々目に見えて来る。

根気が強くて、どんな細かしい事でもコツコツとやって居た。

何だか生え際の薄い様な人であったがなどとも思われる。

低いどっちかと云えば鼻に掛った声で、堪らなく可笑しい時には、上半身を後の方にのばして高笑をする様子が何だか中年の男の様な感じを与えたので、私はその人の笑声がすると注意して見て、面白いなと思って居たものだ。

二十近くまで育って、頭の中も漸々まとまりかけ、体も熟して来た今になって、近い内に、そのすべてがこの地上から消滅して仕舞うのだと思うと、人々の記憶に残るほどの仕事も、短い年月の一生に仕あげられなかった彼の人の気持を察しないわけには行かない。

神田の病院で、彼の人は何を思って居る事だろう。

私が若し今、そう云う境遇になって、死の宣告まで与えられたら、自然にその日が来るのを待ちつづけて居るほどの勇悍な心はない。

はげしい生の執着に悩んだ揚句は、気でも違ってしまうだろう。