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Japanische Klassiker mit Furigana

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ひととき

ひととき

宮本 百合子

Lesen Sie ひととき von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.370 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

あきらめがないと云われても仕方がない。

意気地がないとけなされもしようけれども、自分の一生の仕事を心嬉しく定めて、日々務めて居る。この希望の多い、栄ある一生を、どうしてそう素気なく思い切れよう。

私が四十代にでもなったらどうかは知らないけれども、今の斯う云う気持は詐られない。

彼の人がそんな悲しい日を送って居るときいた十日程後、私は到々思い切って手紙を書いた。

雨が静かに降って居た。

家人から遠ざかった私の書斎は夕飯時でさえやかましくない程なのに、更けた夜の淋しいおだやかさと、荒れた土の肌をうるおおして行く雨のしとやかさが、私の本箱だらけの狭い部屋に満ち満ちて、着て居る薄い袷衣も、髪の毛も皆心に添うた様な晩であった。

机の広い面に両手を這わせて、じいっとして居ると、いつの間にか、今紀州に居る歌人の安永さんの事を思い出した。

それにつれて、種々の事が頭を通りすぎた中にどうしても私に、あの人へのたよりを書かせずには置かない様な事があった。

早い春の暮方、その頃歌をやって居た私共六七人のものは、学校の裏の草の厚い様な所に安永さんを中心に円く座って、てんでに詠草の見っこをして居た。