Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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ものおもうあし

もの思う葦

太宰 治

Lesen Sie もの思う葦 (ものおもうあし) von Dazai Osamu (太宰 治) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 20.430 Zeichen · 42 Bildschirme

Aozora Bunko

」といった工合いに手当りしだいの感情を、われに益する云々てう句に填め込んでいってみても、さほど不体裁な言葉にならぬ。いっそ、「どんな感情でも、自分が可愛いからこそ起る。」と言ってしまっても、どこやら耳あたらしい一理窟として通る。献身とか謙譲とか義侠とかの美徳なるものが、自分のためという慾念を、まるできんたまかなにかのようにひたがくしにかくさせてしまったので、いま出鱈目に、「自分のため」と言われても、ああ慧眼と恐れいったりすることがないともかぎらぬような事態にたちいたるので、デカルト、べつだん卓見を述べたわけではないのである。人は弱さ、しゃれた言いかたをすれば、肩の木の葉の跡とおぼしき箇所に、射込んだふうの矢を真実と呼んでほめそやす。けれども、そんな判り切った弱さに射込むよりは、それを知っていながら、わざとその箇所をはずして射ってやって、相手に、知っているなと感づかせ、しかも自分はあくまでも、知らずにしくじったと呟いて、ほんとうに知らなかったような気になったりするのもまた面白くないか。虚栄の市の誇りもここにあるのだ。この市に集うもの、すべて、むさぼりくらうこと豚のごとく、さかんなること狒狒のごとく、凡そわれに益するところあらむと願望するの情、この市に住むものたちより強きはない。