Japanische Klassiker mit Furigana
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ゆずゆ
ゆず湯
岡本 綺堂
Lesen Sie ゆず湯 (ゆずゆ) von 岡本 綺堂 (おかもときどう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 13.255 Zeichen · 27 Bildschirme
それから半年以上も過ぎた或る夏の晩に又こんなことがあった。わたしが夜の九時頃に涼みから帰ってくると、徳さんの家のなかから劈くような女の声がひびいた。格子の外には通りがかりの人や近所の子供がのぞいていた。
「なんでえ、畜生! ざまあ見やがれ。うぬらのような百姓に判るもんか。」
それはお玉さんの声らしいので、私はびっくりした。なにか兄妹喧嘩でも始めたのかとも思った。店さきに涼んでいる八百屋のおかみさんに訊くと、おかみさんは珍らしくもないという顔をして笑っていた。
「ええ、気ちがいが又あばれ出したんですよ。急に暑くなったんで逆上せたんでしょう。」
「お玉さんですか。」
「もう五、六年まえからおかしいんですよ。」
わたしは思わず戦慄した。わたしにはそれが初耳であった。お玉さんはわたしが下町へ行っているあいだに、いつか気ちがいになっていたのであった。わたしが八百屋のおかみさんと話しているうちにも、お玉さんは何かしきりに呶鳴っていた。息もつかずに「べらぼう、畜生」などと罵っていた。徳さんの声はちっとも聞こえなかった。
家へ帰ってその話をすると、家の者もみんな知っていた。