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Japanische Klassiker mit Furigana

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ようかづきのばん

ようか月の晩

宮本 百合子

Lesen Sie ようか月の晩 (ようかづきのばん) von 宮本 百合子 (みやもとゆりこ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 3.070 Zeichen · 7 Bildschirme

Aozora Bunko

次第にお城の柱に朝日が差して来る頃になると、鏡の前に立ったまま、王女の着物は、ほっそりした若木の林が、朝の太陽に射とおされる模様に変りました。海底の有様は柔かい霧の下に沈み、輝く薔薇色の光線の裡に、葉をそよがせる若い樹が、鮮やかな黒線で現れます。昼頃になると、王女の体全体はまるで天降った太陽そのままに燃え輝きました。胸といわず裾といわず、歓びを告げる平和な焔色にきらめき渡る頂に、澄んだ彼女の碧い二つの瞳ばかりが、気高い天の守りのように見えるのでした。

この着物を身につけさえすると、王女はたといどんな泣き度いことがあっても、それを忘れることが出来ました。つきない泉のような悦ばしさ、照る日のような望みが糸の繍いめをくぐり出て、日々新たに王女の魂を満すのです。

不思議なことに、一本針の婆さんは、着物を王女に差上げると、そのまま姿を隠してしまいました。家の扉の錠前は赤く錆つき、低い窓には蜘蛛が網を張りました。部屋の中には、唯一枚、大きな黒天鵞絨の垂幕が遺っているばかりです。然し、その垂幕には、此世でまたと見られそうもない程素晴らしい繍がどっしりとしてありました。