Japanisch lesen

Japanische Klassiker mit Furigana

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わかむらさき

わか紫

泉 鏡花

Lesen Sie わか紫 (わかむらさき) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.708 Zeichen · 75 Bildschirme

Aozora Bunko

さればかく扉を開ける音信があっても、誰なるかを見る元気はない。たといここに、天津乙女の、麗しき翼を休めたとて、縋る力も絶えたのが、三人といわず、五人といわず、濃く薄く湯気の動くに連れて、低くむらむらと影が行交う。

一時、吸い草臥れて、長々と寝たるもあれば、そのあとへ、這い寄って、灰色の滑らかな背を凹に伸ばしながら両手で穴に縋るもあり、ぐッたりと腰を曲げて臍へ頭をつけるもあり、痩せた膝に、両手を組んでいるのもあり、なえつかれたようになって、俯伏した女も見えた。中に一人、壁の根に跪き、もの打念ずる状して、高く掌を合わせたものの、白き頸の湯煙ほぐれて、黒髪の色と分れた時、夫人の目はやや馴れて、その良人の口に、一点煙草の火の燃えつつあるを認め得た。はじめはそれを、燈の光と見分くることさえ出来ぬのであった。

秋山氏は、真中に据えた大なる大理石の円卓子に肱をつき、椅子にかかって憩いながら、かりそめに細巻をくゆらしていたので、もっとも裸体で、纏えるは一片の布あるのみ。痩せたる上に色さえ朧、見る影もない状ながら、なお床を這い板に僵るる患者の中に、独り身を起していた姿、連添う身に、いかばかりの慰藉なりけむ。