Japanische Klassiker mit Furigana
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わかむらさき
わか紫
泉 鏡花
Lesen Sie わか紫 (わかむらさき) von 泉 鏡花 (いずみきょうか) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 37.708 Zeichen · 75 Bildschirme
十一
「可愛らしくッて、綺麗ですよ。」
薄紫の花一輪、紅の珊瑚に、深みどりの、海の色添う小さな枝、実は二ツついたりけり。
旅客も杖をたてかけて、さしむかいに背を屈め、石を掻抱くようにして、手をついて実を視めたが、眦を返して近々と我を迎うる皓歯を見た。あわれ、茄子、二ツ、その前歯に、鉄漿を含ませたらばとばかり、たとえん方なく長けて、初々しく且つ媚しい、唇を一目見るより、衝と外套の襟を落した。美丈夫と艶なる少女は、ふと飛立つように身を起した。
娘の髪にも旅客の肩にも、石の上なる貢にも、ひらりと射したは鳥の影。
仰いで空を、赫として何にも見えず、お鶴耳許、まぶちのあたり、日は紅に燃ゆるよう。
十一
轟々と音がして、背後の山の傾斜面を、途端に此方に来るものあり。
罪を鳴らす鼓か、と男は慌しく其方を見た。あらず、人車鉄道の、車輪隠れて、窓さえ陰、ただ、橙色に列った勾配のない屋根ばかり、ずるずると曳いて通る。
それが蜜柑の木の間。しかも会社が何週年かの祝日にやあたりけむ、かかる山路に、ひらめく旗、二人の方にそよそよと靡いて、天麗かに祝える趣。
と見る見る頂から下り道、真鶴あたりの樹立の梢、目の下の森をさして、列車は颯と逆落し、風に綾ある紅、白、蒼、いろいろの小旗の滝津瀬、ひらひらと流るる状して、青海さして見えなくなる。