Japanische Klassiker mit Furigana
ja-reading.com
Lesen Sie japanische Klassiker online mit Furigana. Filtern Sie nach JLPT-Niveau, tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung und übersetzen Sie einen Satz.
わがまち
わが町
織田 作之助
Lesen Sie わが町 (わがまち) von 織田 作之助 (おださくのすけ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 93.840 Zeichen · 186 Bildschirme
河童路地はむかしこのあたりに河童が棲んでいたという噂からそういう名がついたほかに俗に只(ただ)裏ともいい、家賃は只同然にやすいさかいやと、日の丸湯の主人は言っていたが、それさえ誰もきちんと払えた例しはなく、かたがた煙突の苦情も言うて行けなかった。
つまりは、貧乏長屋であった。
だから、たとえば蝙蝠傘修繕屋のひとり息子は、小学校にいる間から、新聞配達に雇われて、黄昏の町をちょこちょこ走った。
明るいうちに配ってしまわぬと、帰りの寺町がひっそりと暗くて怖い。十歳の足で、高津神社の裏門の石段を、ある夕方、ひと日、ふた日は晴れたれど、三日、四日、五日は雨に風、道のあしさに乗る駒も、踏みわずらいて、野路病い……と、歌いながら、あわてて降り、黒焼屋の前まで来ると、
「次郎ぼん、次郎ぼん」
うしろから呼び止められた。
振り向くと、血止めの紙きれをじじむさく鼻の穴に詰めこんだ他吉が空の俥をひきながら、にこにこ笑っている。
「他あやん、また喧嘩したんやなア。あんまり売りだしたら、どんならんな」
二軒並んだ黒焼屋の店先へ、器用に夕刊を投げこみながら、そう言うと、
「さいな、あんまり現糞(げんくそ)のわるい事言いやがったさかい……」