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Japanische Klassiker mit Furigana

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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme

Aozora Bunko

遺書に就て

1

その朝、洋画家葛飾龍造の画室の中で、同居人の洋画家小野潤平が死んでいた。

コルク張りの床に俯伏せに倒れて、硬直した右手にピストルを握り、血の流れている右の顳には煙硝の吹いた跡がある。

恰度葛飾は昨夜から不在で、それを最初に発見したのは葛飾の妻の美代子である。

『昨夜十時頃小野さんは街から帰って来ました。わたくしはもう寝床に入っていましたし、小野さんも顔を出しませんでした。――銃声ですか? いいえ、何も存じません。』と美代子はおろおろ声で、出張して来た役人に答えた。

検視官は厭世自殺と認める。

だが、遺書がないのだ。――そこで一人の敏腕な刑事が疑いを残してみたくなる。

『此処に打撲傷があります。』と刑事は死人の顎をぐいと持ち上げた。下顎骨の左の方に暗紫色の痕が見える。

『めりけんを喰ったのではないでしょうか?』

『ふむ、何の為だね?』と上役は仔細に傷痕を検べながら云った。『併し、これは君、もっと尖った固いものだよ。見たまえ、皮膚が切れて血が※(「さんずい+参」、第4水準2-78-61)んでいる。おそらく倒れるはずみに卓子の角にでもぶつけたのだろう――』