Japanische Klassiker mit Furigana
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アンドロギュノスのちすじ
アンドロギュノスの裔
渡辺 温
Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme
風船美人
1
上野の博覧会で軽気球が上げられた。軽気球はまるで古風な銅版画の景色の如く、青々と光るはつ夏の大空に浮かんだ。
この軽気球はそもそも商店の広告なぞではなく、一時間一円で博覧会のお客を乗せる目的から備えつけられたものである。
私は非常に幼い頃、父に連れられて、何かの博覧会を見物したが、その時の会場には大きなフェアリイ・ランドがあって、観覧車やウォタア・シュウトなぞの新奇な乗物とともに、やはり軽気球がお客を満載して上野の杜の天辺に浮かんでいた。(風船なんて危いものはもっての外だ――)と云って、年寄の父はいくら私が強請んでも乗らしてくれなかった。それ以後「風船」は私の最も大きな願望の一つとなった。何もない中空で、一片の雲のように易々と、停っていられると云う道理は、人生の曙に於いて、はじめて私が直面した記念すべき謎であった。
二十年も過ぎて、乗物の風船が、再び現われた。
私は久しい宿望を叶えられる喜びのあまり、お天気の日ならば必らず博覧会の門をくぐった。
風船は、併しちっとも人気がなかった。
私の幼い心と共に最早や時世から取残されてしまったものと見える。