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Japanische Klassiker mit Furigana

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アンドロギュノスのちすじ

アンドロギュノスの裔

渡辺 温

Lesen Sie アンドロギュノスの裔 (アンドロギュノスのちすじ) von 渡辺 温 (わたなべおん) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 129.168 Zeichen · 267 Bildschirme

Aozora Bunko

――でも、お母さんは、どうしてそれっきり他所へお嫁にいらっしゃらなかったの?』

『どうしてって。――お前のお父さんのことが忘れられなかったし、それにあんまり悲しい目に会うと、女は誰でも臆病になってしまうんだろうね。』

『さびしかったでしょう?』

『少しの間さ。すぐにお前が、みんな忘れさせてくれるようになったもの。……』

母の声は草臥てでもいるように聞こえた。

娘は、若い時になら自分よりも器量よしだったに違いない面影の偲ばれる母親が、そんなに早く青春から見捨てられてしまった運命を考えて胸を窄めた。

2

その年の春、智子は女学校の高等科を卒業して、結婚を急ぐ程でもなし、遊んでいるのも冗だったので、小遣い取りに街の或る商事会社へ勤めた。

朝霧の中に咲いた花のような姿が、多くの男たちの目を惹いたのは云う迄もなかった。智子は、併し、賢い考え深い生まれつきだったので、何時も上手に身を慎しむことが出来た。

さて、夏の始めだった。――

智子は、或る日、事務所と同じ建物の地下室にある食堂へ昼食をとりに降りた。其処は何時でも混んでいるので、大てい外へ出て食事をする習慣だったが、その日は仕事が忙がしくてそんな余裕がなかった。