Japanische Klassiker mit Furigana
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カインのまつえい
カインの末裔 クララの出家
有島 武郎
Lesen Sie カインの末裔 クララの出家 (カインのまつえい) von 有島 武郎 (ありしまたけお) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 45.864 Zeichen · 93 Bildschirme
佐藤の妻は安座をかいて長い火箸を右手に握っていた。広岡の妻も背に赤ん坊を背負って、早口にいい募っていた。顔を血だらけにして泥まみれになった佐藤の跡から仁右衛門が這入って来るのを見ると、佐藤の妻は訳を聞く事もせずにがたがた震える歯を噛み合せて猿のように唇の間からむき出しながら仁右衛門の前に立ちはだかって、飛び出しそうな怒りの眼で睨みつけた。物がいえなかった。いきなり火箸を振上げた。仁右衛門は他愛もなくそれを奪い取った。噛みつこうとするのを押しのけた。そして仲裁者が一杯飲もうと勧めるのも聴かずに妻を促して自分の小屋に帰って行った。佐藤の妻は素跣のまま仁右衛門の背に罵詈を浴せながら怒精のようについて来た。そして小屋の前に立ちはだかって、囀るように半ば夢中で仁右衛門夫婦を罵りつづけた。
仁右衛門は押黙ったまま囲炉裡の横座に坐って佐藤の妻の狂態を見つめていた。それは仁右衛門には意外の結果だった。彼れの気分は妙にかたづかないものだった。彼れは佐藤の妻の自分から突然離れたのを怒ったりおかしく思ったり惜んだりしていた。仁右衛門が取合わないので彼女はさすがに小屋の中には這入らなかった。